知人から受けた相談
先日、知人に「相談したいことがある」と言われました。
4年ぐらい前からiDeCoを始めたそうなのですが、国民年金基金連合会から届いた「小規模企業共済等掛金払込証明書」には、今年分について2月までの2か月分しか拠出の履歴がないというのです。
iDeCoを使っている方であればご存じだと思いますが、この証明書は年末調整で所得控除を受けるために必要な書類です。
資金の拠出に関しては「一時停止」手続きをしない限り、毎月決まった額が拠出されるはずなのに、2か月分しかないというのは何とも妙です。
しかしながら、知人が私に送ってくれた写真は、知人が言う通りのことを示していました。
出典:知人より送られてきた小規模企業共済等掛金払込証明書の写真
本人の許可をいただいています。
「一時停止」状況になることは無い話ではありません。
収入が少ない等の理由で、iDeCoへ拠出を一時停止するには、iDeCo口座がある金融機関に「加入者資格喪失届」という書類を提出することで可能になります。
掛金の拠出を一時停止している間は、これまでの拠出金の運用指示を行う「運用指図者」という立場に変わります。
加入者資格喪失届は各金融機関のWebサイトや、iDeCo公式サイトに掲載されています。利用している金融機関のWebサイトに掲載されていない場合は、iDeCo専用のコールセンターなどに連絡して申請書を取り寄せて、記入後提出することで拠出を停止することが可能です。
ところが、知人はこの「一時停止」手続きをした覚えがないといいます。
だとすれば、なぜ資金拠出が一時停止しているのか?
「おかしな話だから、まずはこの国民年金基金連合会に尋ねてみて」と伝えました。
iDeCoのメリットをそれなりに理解している知人は、翌日電話してみたそうです。
この行動力は大事ですね。
「〇〇」したことになっていた
翌日の夜、知人が連絡をくれました。
国民年金基金連合会の回答は、「勤務先を退職したことになっている」だったそうです。
国民年金第2号被保険者がiDeCoに加入している場合、国民年金基金連合会から在籍確認が定期的に入るのだそうです。
勤務先の回答が、知人に関しては「退職した」だったそうで、自動的に資金の拠出が一時停止扱いにされたのだそう。
思いもよらない回答に知人は目を丸くしたそうです。
それもそのはず、知人は今年の3月も、もちろん今でも同じ職場で働いているからです。
国民年金第2号被保険者がiDeCoに加入するためには、勤務先に記入していただく書類があります。
たいてい、給与支払い等を担当しているセクションがその役割を担っています。
知人は翌日職場で尋ねてみることにしました。
勤務先で尋ねてみた
翌日、知人は給与支払い担当者に尋ねてみたそうです。
結果は、国民年金基金連合会に問い合わせた通りで、退職の扱いをしてしまっていたとのこと。
勤務先がこんな処理をしてしまったのは、知人の勤務先の多くのiDeCoの加入者は給与天引きで資金拠出しているそうですが、知人は自分自身で資金を拠出しており、給与天引きの対象ではなかったことが理由、といったような説明だったそう。
これは完全に知人の勤務先の手続きミスなわけですが、過ぎた時間は戻りません。
知人は、「10ヶ月分の未拠出は機会損失だし、所得控除も受けられないのはとても悔しい」と言っていました。
これは、毎年きちんと年末調整手続きをしているからこそ把握しているiDeCo加入のメリットです。拠出する資金がないわけではなかったので、機会損失は悔しいですね。
知人は資金拠出を再開するために、金融機関から書類を手に入れて、記入して送付するという手続きが必要になったのです。
知人にも落ち度はあった
この件、知人の勤務先だけに非があったかといえば実はそうではありません。
国民年金基金連合会が知人の勤務先に確認した結果「退職」とされたあと、国民年金基金連合会からは「退職されたようですが」という確認をするための郵便物が知人の自宅に送付されていたそうです。
その郵便物に気付けば、再開手続きの有無はともかくとして、機会損失の期間は短くて済んだかもしれません。
知人は、「その点に関しては、まったく気づいていなくて自分にも落ち度はある」と素直に認めていました。
iDeCoに加入している人が心がけたいこと
というわけで、レアなケースだとはいえ(頻繁に発生されるのも嫌な話です)、こんな事例もあるということをぜひ知っていただきたくて、知人の了承を得て書いてみました。
iDeCoに加入している方は、残高の変化だけではなく、定期的に取引履歴を確認したほうがいいでしょう。
知人のケースのような場合、毎月取引履歴を確認しておけば、少なくとも翌月、翌々月には資金の拠出がないことに気付いたと思います。
また、国民年金基金連合会からの郵便物は必ず開封して内容を確かめてほしいです。
少し横にそれますが、これは企業型確定拠出年金制度(以下:企業型DC)がある勤務先を退職して確定拠出年金の移換をするときにも大事なことです。
転職先に企業型DCがある場合は、転職先の制度に移換すればいいのですが、そうではない場合は、iDeCoに加入して資金を移換する必要があります。
企業型DC制度がある企業を退職する場合、退職した会社は自社プランからの脱退手続きをしてくれます。その結果、運用していた資金はいったん全部売却されて国民年金基金連合会に移ります。
その後、国民年金基金連合会からは資金が移換されたという郵便が届きます。これを以て、自分が開設したiDeCo口座に資金を移せるのです。
退職後はなおのこと、国民年金基金連合会からの郵便物は必ず開封して、手続きを怠らないようにしたいものです。
知人のケースでは、郵便物確認を怠らなければ、機会損失の期間を少なくすることができたでしょう。
まとめ
国民年金第2号被保険者がiDeCoに加入している場合、加入者が知らないうちに資金の拠出が停止されることが稀にある
iDeCo加入者は、取引履歴を定期的に確認したい
国民年金基金連合会からの郵便物は放置しないこと