株式投資をされている方の中には、地銀株の下落傾向が続いていることを気にされている方もいるかと思います。なぜ下落傾向が続いているのでしょうか。今回は、その理由について解説します。
今回の記事をご覧になれば、地銀株の下落理由がきっと分かるかと思います。ぜひ最後まで読み進めてみてください。
株価下落の4つの要因と弊社方針?
地銀の株は、買いなのか?売りなのか?
弊社は自己・自社運用の一環として「投機的資金で買い」、つまり上がるほうには賭けるけど、大きなリスクを取っているという前提の上で、中長期で積み立てポジションを仕込んでいます。
地銀株の下落要因にはさまざまなものがありますが、大きく分けると以下の5点になるでしょう。
- リーマンショックのトラウマ
- 低金利政策による資産の含み損と取り付け騒ぎ
- 低金利政策による貸し出し利幅の減少
- 金融庁による、融資締め付け
- 投資家・機関投資家(特に海外)による地銀株離れ
それぞれの要因について、以下に詳しく解説します。
リーマンショックのトラウマ
海外ではシリコンバレーバンクやシグネチャーバンクといった地銀が相次いで破綻しました。
これと同じことが起きるのではないか!?ということで、マーケットは疑心暗鬼になっています。
あとまぁ、リーマンショックの「当時も銀行が破綻して、大丈夫!!といったのに二週間後、大暴落が来た!!」というトラウマから「今回もいよいよか!?」と騒いでいる人が多い印象です。心配しすぎだと思うんですけどね。
それはさておき、ではこの「地銀の破綻」ですが、何でこんなことが起こったのでしょうか?
シリコンバレーバンクはスタートアップ・ベンチャーにハイリスクで融資をする(+CFOや審査部がリーマンショックでやらかしたメンバー勢ぞろい)、シグネチャーバンクは仮想通貨関連企業への融資が強かった、つまりこれら2行は「経営の仕方がアホでリスクを取りすぎた」という共通点があるのですが、それ以外の要因を考えてみると、それは「信用棄損による取り付け騒ぎ」です。
「○○銀行はやばいらしい!預金を引き出さなきゃ!」、このような動きを「取り付け騒ぎ」と呼びます。
これが起こると、「現金をしっかり残して余裕を持っている銀行以外は、実際の業績がよかろうが悪かろうがつぶれます」。
銀行が貸しているお金は(いろいろクッションを挟んでますが)、皆さんの預金です。
で、銀行はその「預金・現金」をそのまま持っておくのはもったいない!とアホなことを言って証券で運用しています。つまりいきなり大勢で来られてもキャッシュがないわけですね。
これが、次の「低金利政策による資産の含み損」と合わさり、致命傷になりました。
低金利政策による資産の含み損と取り付け騒ぎ
先ほど「銀行はその「預金・現金」をそのまま持っておくのはもったいない!とアホなことを言って証券で運用しています」と書きましたが、その投資先証券というのが「債券」、とりわけ「国債」です。
この国債ですが、10年・20年という満期まで持ち続ければ、いくら含み損が出ていても元本+利息は手元に残るという素晴らしい商品です。その分、下部と違って大儲けはできませんが。
言い方を変えるなら、「満期まで待たずに途中売却すると、損失が生じることがある」商品だとも言えます。詳しくは本稿では書きませんが簡単に、「今アメリカがやってる利上げが発生すると含み損が生じる」とだけ覚えておいてください。
つまり、
- (銀行)預金を現金で持っとくのは損だ!国債を買うぞ!!
- (顧客)「経営やばいらしいな!!預金を引き出すぞ!!」
- (銀行)えっ!?現金が足りない!国債を売却だ →損失確定して大損発表
- (顧客)やっぱり経営が危ないんじゃないか!!現金を引き出せ!!
- 3に戻る。以下、倒産までエンドレス。
- (アメリカ政府)やばい!預金を全額保護するから(ほかの銀行顧客は)現金引き出すのやめろ!金融システムは安定しているから安心して!
という流れになったわけです。
この、「国債を保有している」というのはアメリカだけでなく、全世界の銀行で行われていることなので、「金融株全体」という形で、疑心暗鬼が広がり、値を下げているわけですね。
低金利政策による貸し出し利幅の減少(本業が不採算)
一般的に銀行は、お金を貸す時の「貸出金利」と、貸すためのお金を集めるときの「預金金利」の差額によって収益を上げています。融資先に資金を融資する際の金利である貸出金利から、預金者に支払う預金金利を差し引いた金額がもうけとなっているわけです。
まぁ、最近は銀行窓口でおじいちゃん・おばあちゃんを騙して金融商品を販売し、法外な手数料を取ることで社会問題となっているところも存在しますが、それはいったんおいておきましょう。
近年、デフレからの脱却のため、物価の上昇を狙って市中にお金を大量に流す政策が取られてきました。大量にお金が流れることによって、企業や家計がお金を借りやすくし、その結果消費が盛り上がり物価を上昇させるというシナリオです。
しかし、なかなか予定したレベルまでの物価の上昇が果たせなかったため、さらに市中にお金を流通させるために、日銀はマイナス金利政策を導入しました。
マイナス金利政策を実施すると、銀行が日銀にお金を預けるときに利子を払う必要(つまり預金があればあるほど損をする)が生じ、銀行が無理やりにでもお金を貸し出して、市中にお金を流通せざるをえなくなるわけです。
こうして導入されたマイナス金利政策ですが、この政策によって銀行から融資先にお金を貸し出す金利も下げざるをえなくなり、結果として銀行とくに体力が比較的弱い地銀の収益が悪化するといった事態になりました。その結果、地銀の株価が下落するということになりました。
金融庁による、融資締め付け
金融機関の貸し付けにおいて、稼ぎ頭は
- 企業への事業融資
- 不動産融資
- カードローン(フリーローン)
です。
それなりの金利が取れて、ロットが大きいからですね。逆に住宅ローンとか目的別ローンは儲かりません。小口、もしくは低金利だからです。
で、ですが。
まず1は、長引くコロナショックで融資先がない。
また2は、スルガ銀行・かぼちゃの馬車事件以降、金融庁の締め付けと審査が普通になった(=今までがおかしかった。不動産屋が通帳を偽造したりとか)などの影響で減少。
カードローンも、年収の3分の1以上は貸せないという総量規制の網を、銀行だけはかいくぐっているためにシェアを伸ばしていたが、締め付け傾向。
こういった形で、「規制により儲かる先に貸したくても貸せない」という現状があるわけです。
つまり、前項と合わせ「本業が不採算になりつつある中、儲けられる融資先が減少している」。そりゃ株価も落ちますよね・・・ということです。
投資家・機関投資家による地銀株離れ
地銀に限らずですが、日本の一部上場(プライムマーケット)の企業は、約7割の株を海外が保有しています。
最近は日銀も買いあさっているため比率は下落している企業もあるでしょうが、それでも約5割は海外勢力が保有です。
(※統計データでは、「海外の証券会社が保有している・もしくは証券会社を通して購入している株主、という形で出るので、正確な数値は分かりません」
前述のとおり、地銀は収益悪化要因が多く、株価も低迷を来しています。これらの状況を踏まえ、「一旦地銀株式を売却しておこう」という判断がなされているのが現状です。
で、弊社みたいなリスク資金が「この動きは一時的である」というほうに賭けて買ってるから、「大暴落」まで入ってない、という現状です。
もっとも、あくまでこれは「賭け」。
機関投資家による地銀離れ(地銀株の売却)によって、さらに地銀株が下落するといった可能性も否定できません。
まとめ
今回は、地銀株が下落している要因について、5つ紹介してきました。いかがでしたでしょうか。
その中でもとくに影響が大きい要因は、国内外の「金利政策の継続」にあると考えられます。
低金利政策の継続については、一部で見直しの動きも予想されているため、今後は改善していく可能性はあるでしょう。
このように、地銀株は下落傾向が続いています。今後どのような動きになるのか、株価とともに日銀の動きからも目が離せないといえるでしょう。
投資をする際のご参考にしていただければ幸いです。