アベノミクス以降の高値が視野に入った不動産株の動きを振り返り、今後を予想

株式市場を見る上で、どのような銘柄が物色されているのかを知るには、様々な株価指数を見る必要があります。JPX日本取引所グループは、多くの株価指数を日々公表しています(JPX日本取引所グループのHP「リアルタイム株価指数値一覧」で見ることができます)。

最近の業種別株価指数の動きを見ますと、円安にもかかわらず、9月上旬の高値をけん引しましたのは、「飲食や不動産、銀行など、日本の物価や金利の上昇、内需回復の恩恵を受ける企業」でした(日本経済新聞9月6日3面より)。

今回は、アベノミクスが始まって以降の高値に近づいている東証業種別株価指数・不動産について考えて見ました。「基調が変わってきた」印象はありますが、一段の上昇を期待するには、より明確な材料、株価の変化などが欲しいと考えます。

目次

業種別株価指数・不動産とは

業種別株価指数について検索してみますと、以下のホームページで詳しく説明されています。(業種とはなに?東証の33業種について解説します – TBL Online Education Center (tbladvisory.com)

不動産株は、土地、建物など不動産の賃貸、売買、管理を行う業種。住宅やオフィス、商業施設など様々な用途があり、その需要は比較的安定しており、固定資産であるため、流動性が低く、価格変動も比較的緩やかであるのが特徴。需要や供給の変動、政策の変更、金利の変動、自然災害などが株価に影響を与えます。

また、デフレの象徴とも言える業種であり、最近の物価上昇を背景に足元は堅調に推移しています。金利の上昇は通常、不動産株に逆風となりますが、金利上昇下でも最近は堅調に推移しています。

アベノミクス以降の高値が視野に入った不動産株


ここでは、東証業種別株価指数・不動産の動きとその36カ月移動平均について示してみました。

アベノミクス(2012年終盤)以降は多くの業種が上昇しましたが、業種別株価指数・不動産は2013年12月に1932をつけ、その後は冴えない動きをしてきました。ここに来て、ようやくボックス相場を上抜け、アベノミクス以降に付けた高値が視野に入りました。

数年に一度の高値を上抜けるかどうかは、株価をみる上で重要なポイントとなります。株式市場では、株価が上がったところで売りを行う(逆張り戦略を行う)投資家が存在していますので、数年に一度の高値を上抜けるということは利益確定売りを吸収できたことの証明になります。

主だった高値を上抜けた後はその後も上昇しやすいといえるでしょう。アベノミクス以降の高値を上抜けた業種別株価指数としては、輸送用機器、卸売業などが挙げられます(図は省略)が、やはりある程度大きな値幅の上昇がみられました。

また、業種別株価指数・不動産の36カ月移動平均との関係をみますと、36カ月移動平均の方向性(上向きであるか下向きであるか)が重要だと思われます。今回はまだ明確に上向きになったとは言えないでしょう。ただ、上昇するとそのピッチは速いものとなる傾向があります。

2014年から不動産株が低迷した背景

不動産株は、バブル崩壊以降と比べますと、アベノミクス以降は高い水準で推移してきましたが、堅調な動きとは言えませんでした。デフレ脱却が明確でない状況が続きましたので、株価も明確な上昇には至りませんでした。

足元の不動産株が回復した背景

日本経済新聞(9月7日21面)では以下のことが指摘されています。

三鬼商事のデータを元にモルガン・スタンレーMUFG証券が調べたものとして「東京都心部のオフィス需要が足元(月次変化)で増えている」。ただし、コロナ前ほどには回復していないもようです。

「政府が重視する物価や賃金の4指標が全て脱デフレを示唆する状況」であることも指摘されています。不動産株の動きも、これまでとやや異なるように感じられますので、注目したい業種の一つです。

各移動平均との乖離率について

株式市場では、上昇または下落のスピードが過熱しているかどうか(速過ぎるか)を捉えようとする指標がいくつかあります。よく見かけるものに、株価と各移動平均との乖離(かいり)率があります。各営業日での株価と各移動平均がどの程度乖離しているかを計算するものです。

「東証業種別株価指数・不動産」を対象にした75日移動平均乖離率の推移

下図は、最近の東証業種別株価指数・不動産とその75日移動平均乖離率の推移を示したものです。

東証業種別株価指数・不動産は、小規模な反発・反落が多い傾向がありますので、少し長めの75日間の移動平均を使ってみました。小規模な動きに左右されないためです。

日経平均の25日移動平均との乖離率は、一般的に、プラス5%を超えると上昇ピッチが速いとされ、マイナス5%を下回ると下落ピッチが速いと言われますが、 最近の東証業種別株価指数・不動産の75日移動平均乖離率を見ますと、プラス12%前後で上昇が止まりやすい傾向があります。また、マイナス10%前後で下落が止まりやすい傾向があります。

過去の推移を見ますと、プラス12%を超えるようだと、上昇は止まりやすいのですが、1~2年後に再び高値を更新するケースが見られています。足元の水準は、2016年や2020年につけた水準よりやや低くなっています。この点で、現在は緩やかな上昇場面に入った可能性はありそうです。

3、4月に安値を付けやすい傾向がある

近年の安値を付けた時期を調べますと、3月に安値をつけるケースが目立ちます。決算内容を確認してから買いを入れる投資家が多いかも知れません。

今後の戦略は

今回は、東証業種別株価指数・不動産で2つの移動平均との関係などをとりあげましたが、ここに来て動きが(これまでと)異なるものになってきたと思われます。明確な上昇場面に入ったとは言えませんが、過去の上昇場面で一段高となってきたことは魅力です。

金利上昇などを理由に下落する場面で、75日移動平均のマイナスに乖離した場面などでは買いを検討したいと考えます。

投資・運用の参考にしていただければ幸いです。


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