TOPIXのルールを知る -浮動株-

TOPIXは「浮動株時価総額加重平均方式」株価指数です。

「浮動株」は、市場で売買される可能性が高いと考えられる株式のことです。

「浮動株時価総額加重平均方式」は、指数用上場株式数(基本的には発行済株式数と同じ)に占める浮動株の割合に応じて、株価指数の構成銘柄のウエイトを算出します。

市場における構成銘柄の流動性を反映する仕組みであり、世界の主要な株価指数の算出に取り入れられています。

代表的なところで言えば、米国のS&P500も「浮動株時価総額加重平均方式」です。

浮動株比率(FFW=Free Float Weight)は「浮動株の分布状況に応じた比率」で、株式会社JPX総研(以下:「JPX総研」)が銘柄別に算定し、指数の算出に使われています。なお浮動株比率の値は現在は無料では手に入りません。JPX総研が提供する「指数基礎情報サービス」を利用することで手に入れることができます。

出典: JPX総研 website

というわけで、浮動株比率をどのように算出しているかをご紹介します。

ご興味があれば、JPX総研が発行している「浮動株比率の算定方法」(https://www.jpx.co.jp/markets/indices/line-up/files/cal2_1_FFW.pdf)をご参照ください。

目次

浮動株比率の算定方法

手順は以下の通りです。

  1. 有価証券報告書等の公表資料(有価証券報告書を基に作成された株式会社東洋経済新報社のデータを含む。以下同じ。)から固定株(固定的所有と見られる株式)を推定する。
  2. 固定株比率(=固定株数÷指数用上場株式数)を算定する、
  3. 「1-固定株比率」の数値から浮動株比率を求める」

浮動株比率の刻みは 0.00001 で、最小値は 0.00000、最大値は 1.00000 です。

しかし、1.00000になることはないと考えて問題ありません。

何故なら以下に該当する株式のうち、保有目的が「純投資」(いわゆるリターンを追求する投資)以外の場合は「固定株」と扱われるからです。

 大株主上位 10 位の保有株(JPX総研が浮動株とみなすことが適当であると判断した場合にはこの限りではない)

  • 自己株式等(相互保有株式 (会社法 308 条 1 項により議決権の制限を受けている株式)を含む)
  • 役員等の保有株
  • 他の上場会社等が保有する株式
  • その他JPX総研が適当とみなす事例(長期的又は固定的所有とみられる株式等)

浮動株比率は定期的に見直される

各銘柄の浮動株比率は、その決算期に応じて年に一度見直されます。

出典:株式会社JPX総研 「浮動株比率の算定方法」

浮動株比率が変わると、その浮動株比率を用いて運用している資金は、浮動株比率の変化に応じた売買を行います。

なお、実施日は「最終営業日」と掲載されますが、この最終営業日の寄付(よりつき)時に浮動株比率を調整するため、最終営業日の前営業日の引けにリバランスが起きます。つまり、リバランス実施時は大きな商いになります。

浮動株比率の刻みは0.00001 ですが、実際は、0.05刻みで扱われます。実際の値を0.05刻みで切り上げられます。

例えば、実際の浮動株比率が0.62の場合は、0.65に切り上げられるということです。

出典:株式会社JPX総研 「浮動株比率の算定方法」

なお、大規模な増資、TOB等があれば、JPX総研の判断に応じて、定期見直しを待たずに臨時見直しされることがあります。

「調整係数」

TOPIX の算出対象のうち、過去の売買状況に照らし、時価総額に比べて流動性が低いとみられる銘柄については、有価証券報告書等の公表資料から算定した浮動株比率に一定の「調整係数」(0.75)を乗じた比率を、TOPIX 等の算出に反映する浮動株比率として使用されます。

本来の浮動株比率が0.65であっても、流動性が低いと、0.65×0.75=0.4875、切り上げて0.5になるということです。地銀株などに多いです。

調整係数を適用する銘柄は、毎年定期的に見直しが実施されます。

具体的には、2 月末時点の TOPIX の算出対象の中から調整係数を乗じる銘柄を選定し、4 月第 5 営業日に該当銘柄を公表、4 月最終営業日に定期見直しを実施します。

なお、新規上場又は市場区分の変更等によって、3 月 1 日以降、翌年 2 月末までの間に TOPIX に追加された銘柄は、翌年 4 月の定期見直しまでの間は、調整係数を乗じる銘柄として扱われます。

 具体例を挙げると、2023年10月6日にグロース市場からプライム市場へ市場変更した霞ヶ関キャピタル(3498)は、少なくとも2024年4月までは調整係数を乗じる銘柄です。言い換えると、調整係数を解除されると、浮動株比率が上昇しますから、指数連動資金が買いに向かうことが多い銘柄となります。

ただし、株式移転等による新規上場銘柄について、旧会社(2 社以上による場合は実質的な存続会社)が調整係数を乗じられている場合は、調整係数を乗じる銘柄とされます。

調整係数を解除された銘柄、適用される銘柄は、毎年4月に東証が公表します。

https://www.jpx.co.jp/markets/indices/topix/tvdivq00000030ne-att/hp_j.pdf

 こちらのpdfファイルを確認すると、現在プライム市場に所属していない銘柄も掲載されています。それが何故かは次回の記事で書かせていただきます。

 「浮動株」と「流通株式」の違い

東証の各市場の上場維持基準に用いられるのが「流通株式比率」です。

「浮動株」に似ているように見えますが、実はこの2つは違います。

「浮動株」は、算出指数における指数構成銘柄のウエイトを計算するための一要素です。

一方、「流通株式」は、上場制度上の基準の一つとして、上場申請会社や上場会社が基準に適合しているか否か絶対的な水準を把握するために算出しているものです。

両者の目的・性質は本質的に異なりますが、残念ながら個人投資家のレベルでは違いは判らないですね。

個人投資家のレベルではどちらの数字も知りかねるので、厳密に違いを知っておく必要はないと思います。

まとめ

  1. 「浮動株」は、市場で売買される可能性が高いと考えられる株式のことである。浮動株比率(FFW=Free Float Weight)は「浮動株の分布状況に応じた比率」で、指数の算出に使われている。
  2. 浮動株比率が変わると、その浮動株比率を用いて運用している資金は、浮動株比率の変化に応じた売買を行う。銘柄の決算期に応じた定期見直し時期を把握しておくとよい
  3.  過去の売買状況に照らし、時価総額に比べて流動性が低いとみられる銘柄については、有価証券報告書等の公表資料から算定した浮動株比率に一定の「調整係数」(0.75)を乗じた比率を浮動株とする。新規にTOPIXの算出対象となった銘柄には必ず採用される係数で、見直しは毎年4月である。
URLをコピーする
URLをコピーしました!

この記事を書いた人

大学講師兼投資ライター
システムエンジニア->証券アナリスト->地方公務員->セミリタイアな中小企業の嘱託研究員->大学講師

CFP、FP1級、日本証券アナリスト協会認定証券アナリスト保有。
TOEIC950。MBA取得済。投資歴31年余り。

システムエンジニア時代に投信売買システム、生命保険契約管理システムに携わり、それらのしくみにも精通。
趣味はサッカー観戦(川崎Fサポ)、旅、読書、野菜栽培、フラワーアレンジメント。
がんサバイバーでもある。

目次
閉じる