電機株指数と東京エレクトロンの株価の動きを振り返る

日本の電機株全体の動きを見る上で、業種別株価指数・電気機器の動きは参考になります。そのなかで、最近市場の注目を集めているのが「半導体関連株」です。過去の推移で、これらは比較的、連動して来ましたが、最近は違いが大きくなる場面が目立ちます。

今回は、業種別株価指数・電気機器と、半導体関連株のなかでも半導体装置株に分類される東京エレクトロンの株価の動きを振り返り、今後どのように推移しやすいかを考えました。今後、これらは異なる動きをするものとして把握した方が良いと考えます。

目次

世界の半導体市場、半導体製造装置の市場予想

以下は、一般社団法人・日本半導体製造装置協会の資料から抽出しました。

WSTS(世界半導体市場統計)は、昨年 11 月に最新の半導体市場予測を発表しました。2023 年の世界半導体市場規模は前年比9.4%減の 5,201 億米ドル、2024年は 13.1%増の 5,884億米ドルと、共に前回6月発表時よりも上方修正されました。2030 年に世界半導体市場は1兆ドルを目指すと言われており、半導体製造装置も同様に中期的な高い成長率が見込まれています。

以下はSEMI(半導体の国際団体)のHPから抽出しました。

SEMIは12月12日(日本時間)、SEMICON Japan2023において、世界半導体製造装置の2023年末市場予測を発表しました。

2023年の半導体製造装置(新品)の世界販売額は1、000億ドルに到達し、過去最高であった2022年の1、074億ドルからは6.1%減少となる見込みです。

2024年には半導体製造装置市場は成長を回復し、2025年には前工程と後工程の両分野の増進により新記録となる1240億ドルに到達すると予測されます。

世界の半導体製造装置企業の業績が復調の兆し

以下は日本経済新聞朝刊2月17日18面から抽出しました。

大手9社の2023年10〜12月期(一部11月〜24年1月期)の純利益は7社が事前の市場予想を上回りました。中国の非先端分野を中心とした旺盛な半導体投資が装置需要を支えています。生成AI(人工知能)向けの市場も膨らみつつあり、2024年以降の業績回復の確度が高まってきました。

前工程向け装置を主力とする東京エレクトンの純利益は市場予想を22%上回りました。

目先は、半導体需要に占める割合が大きいスマートフォンやパソコン向けの需要回復が焦点となりそうです。韓国サムスン電子や米インテルなどが発売したAI機能を搭載した新端末が買い換えを促せるかも注目されます。

業種別株価指数・電気機器のこれまでの動き

半導体装置株は現在、業種別株価指数で「電気機器」に分類されています。


図は、業種別株価指数・電気機器の動きとその36カ月移動平均乖離率の推移を示したものです。1992年あたりがパソコンの普及期、1998年あたりがインターネットの普及期、2009年あたりがスマートフォンの普及期と言われています。いずれの時期もその後の業種別株価指数・電気機器は上昇したことが分かります。今後は、生成AIの普及が注目されます。

36カ月移動平均かい離率の推移を見ますと、バブル期の1990年高値をつける前、ITバブル期の1999年に高値をつけたときに大きく上方にかい離したことが分かります。近年では、アベノミクスが始まった後の2015年、コロナ禍による悲観論が後退した2021年に大きく上方にかい離したことが分かります。

 1999年の高値をつけたときを除けば、36カ月移動平均かい離率が40%を超えることは良好な経験則になっています。その後も上昇基調になっています。

また、アベノミクスが始まってからは、36カ月移動平均かい離率が0%を大きく下回っていません。つまり、業種別株価指数・電気機器は36カ月移動平均の前後が下値メドとなっています。

今後は、36カ月移動平均かい離率が40%を超えるかどうかを見極めたいと考えます。

「東京エレクトロン」株のこれまでの動き

図は、「東京エレクトロン」の株価とその36カ月移動平均乖離率の推移を示したものです。
1992年、1998年あたりから上昇したことは業種別株価指数・電気機器と同じです。2009年前後からはすぐに上昇できず、アベノミクスが実質的に始まった2013年を底値にして上昇しました。最近の上昇の勢いは、業種別株価指数・電気機器より非常に大きくなっています。

36カ月移動平均かい離率の推移を見ますと、ITバブル期の1999年に高値をつけたときに大きく上方にかい離したことが分かります。アベノミクスが始まって以降は2017年(120%台)、2021年(130%台)に大きく上方にかい離したことが分かります。それぞれ、120%台、130%台をつけた後に、いったん反落しました

一方、アベノミクスが始まってからは、36カ月移動平均かい離率が0%を大きく下回っていません。つまり、東京エレクトロンの株価は36カ月移動平均の前後が下値メドとなってきました。 

今後は、調整する場面もあると考えますが、下値は限られそうです

半導体株の新指数の動きに注目

(以下は、日本経済新聞朝刊2月10日20面の記事から抜粋しました。

日本経済新聞社は、東京証券取引所に上場する半導体関連株で構成する「日経半導体株指数」の算出・公表を3月25日に始めます。半導体はデジタル製品や人工知能(AI)向けに世界の需要が拡大。各国で投資の対象となり、さらなる需要増が見込まれます。

 新指数は、製造装置や素材といった幅広い分野で高シェアを持つ日本の半導体関連株の動きを映します。東証上場で(日本経済新聞社の)業種分類の半導体関連業種に属している企業のうち、時価総額が大きい30銘柄を組み入れます。構成企業の定期見直しは年1回、11月末に実施するようです。

 今後の戦略

今回、取り挙げましたように業種別株価指数・電気機器と半導体関連株の動きは、違いが目立つようになっています。半導体株の新指数はその意味で注目されやすいと考えます。東京エレクトロン株の動きを振り返ると、買われ過ぎた場面ではその後に一定の調整場面がありました。

半導体株の新指数が発表されるようになると、半導体株全体の動きや傾向を捉えやすくなります。各指数で過去に見られた傾向を参考にすることは投資のパフォーマンスを向上させる上で有効と考えます。

この記事は投資経済マーケットについて学習および解説をすることを目的に作成されています。 投資や運用の推奨および加入や結果の保証を行うものではございません。 参考資料としてご活用いただき、運用を行う場合は自己責任でお願いたします。

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