なぜ投資初心者は短期投資で勝てないのか?損切りできない理由

投資で利益を上げるためには、テクニカル分析のようなチャートの動きから売買を判断するスキルだけでなく、利確と損切りのポジションを忠実に守ることが重要とされています。

特に、売買頻度が高い短期取引では損切りできるか否かが、投資成績に大きく影響します。

損切りが重要であることは投資家であれば一度は聞いたことがあるはずですが、いざトレードとなると実践できず、損失を拡大する投資家が非常に多いです。

なぜ損切りできないのか?その理由について解説します。

目次

損切りが重要な理由

損切りが重要な理由は損失の拡大を防ぐためです。

まず損切とは、保有する株を売却して損失を確定させることです。

損切りする場合は売りのポジションを事前に決めておきます。

例えば5%で損切りのポジションをとるとします。

A株を10万円分購入したとすると、損切のポジションは

10万円×0.95(-5%)=9万5千円です。

A株の評価額が9万5千円を下回ったら損切りを実行して、5千円の損失を確定させます。

損失の拡大を防ぐことが重要な理由は「損失率」と同じ「利益率」を上げても元値に戻らないからです。

損失率元値にもどす利益率
-5%+5.26%
-10%+11.11%
-30%+42.86%
-50%+100%

上記は損切りで損失を確定させたあと、元値に戻すために何%の利益を得る必要があるかを表しています。

例えばA株を10万円分購入したとします。

分かりやすく解説するため、ここでは-50%で損切りを行なったとします。

損失を確定させると、A株の評価額は5万円です。

この5万円を10万円に戻すためには100%の利益率、つまり株価を倍にする必要があります。

厳密には売買手数料もかかるため、さらに利益率を上げなければ元値には戻りません。

この理屈は頭では理解できても、実際に損失を確定させる損切りの実行となると難しいものです。

それはなぜでしょうか?

人間は損をしやすい生き物である

1.プロスペクト理論

プロスペクト理論は、2002年にダニエル・カーネマン博士がノーベル経済学賞を受賞した行動経済学における理論です。

その理論では、人間は損をしやすい生き物であると考えられています。

プロスペクト理論を例題で考えてみましょう。

これから、2つの質問をします。

1つ目の質問です。

問1.あなたの目の前に100万円があります。どちらを選択しますか?

A.なにもせず100万円をそのままもらう

B.あたりとはずれが1枚ずつ入ったくじを引く

 あたりがでたら200万円、はずれがでたら0円

続いて2つ目の質問です。

問2.あなたは友人に100万円借金しています。どちらを選択しますか?

A.なにもせず借金は100万円のまま

B.あたりとはずれが1枚ずつ入ったくじを引く

 あたりがでたら借金は帳消し、はずれがでたら借金は200万円

この質問に対して、ほとんどの方が1つ目はAを選び、2つ目はBを選んでしまうそうです。

これがプロスペクト理論における人間の本能的な行動です。

つまり、人間は利益を得る場合はリスクを避けたがり、損失を被る場合はリスクを取ろうとします。

この質問を株の売買に置き換えると、買い値より株価が上がれば我慢できず小額で利益を確定しやすく、逆に株価が下がればいつか値が戻るだろうと考え、損切りできないということです。

人間は「損大利小」の選択を本能的にしてしまいます。

利益を大きく、損失が小さい「利大損小」な売買は本能に逆らった取引といえます。

2.サンクコスト効果

サンクコスト効果とは「時間やお金を使ったからやめてしまうのはもったいない」という気持ちになることで、行動経済学や心理学で使われる用語です。

日本語で訳すと「埋没費用」といいます。

サンクコスト効果は日常でもさまざまな場面で見られます。

例えば、2000円を支払ってチケットを購入し映画鑑賞するとします。

映画の内容は期待外れでつまらないものでしたが「せっかく2000円払ったから最後まで観て元を取りたい」と思い、途中退席できず結局最後まで映画を観てしまう。

これがサンクコスト効果です。

株の売買に置き換えると、株価が上がると思っていたが値下がりし一度ナンピン買いをしました。

さらに値が下がりますが、投資した期間と資金がもったいなく感じられ損切りできず、追加で資金を投入して、値が上がるまで塩漬けにしてしまう。

こういった一連の流れがサンクコストです。

サンクコストの根本は人間の損失回避性にあると考えられます。

人は何かを得る喜びよりも、失う悲しみを大きく感じる性質があります。

10万円貰う喜びよりも、10万円失う悲しみの方が大きいということです。

トレードがうまく利益を上げ続ける人は、本能に逆らって機械的に利確や損切ができる特徴があるといえます。

まとめ

株の取引、特に短期投資では損切りで損失の拡大を防ぐことが重要ですが、人間は本能的に損をしやすい生き物です。

損大利小の選択をしてしまう

サンクコスト効果で損失拡大しやすい

上記を克服するためには時間や経験が必要なので、投資初心者が短期投資で勝ち続けることは難しいと考えられます。

これから短期投資で利益を上げたいと考えている方は、少なくともこの記事の内容を理解し、本能に逆らったトレードの訓練をしていきたいところです。

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この記事を書いた人

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