穀物相場の動きを振り返り、今後の動きを予想

世界的なインフレが見られるなかで、3月あたりから金などの商品の上昇が目立っています。投資対象となる商品として、金を含む貴金属(銀、プラチナなど)、原油などのエネルギー、穀物などがあります。今回は、穀物の中のトウモロコシ、小麦の価格の動きに注目してみました。穀物の価格は作付けから収穫までの天候、消費量に左右されますので、季節的な傾向には注目したいと考えます。

目次

 穀物相場とは

以下は、日本経済新聞ホームページ(2023年3月25日掲載)より抜粋しました。

トウモロコシや小麦などの穀物は、食品原料や家畜の飼料として欠かせない商品です。農家や食品会社は日々穀物の売り買いをしますが、その際参考となるのが先物取引の価格です。先物取引には金融機関なども参加し、穀物は株式のような投資対象にもなっています。

穀物取引の中心になっているのは、米国シカゴにあるシカゴ商品取引所です。米国はトウモロコシの世界最大の生産国で、大豆や小麦の主要な輸出国です。米中西部は「コーンベルト」と呼ばれる穀物産地が広がっており、距離的に近いシカゴに先物取引所があります。取引量が多いことから、シカゴ先物取引が世界中の取引の指標として重視されています。

個人も商品ファンドなどを通して穀物に投資することは可能です。日本の商品先物取引所にも上場しており、商品先物会社などに口座を開いて内外の商品を直接売買することもできます。ただし、商品先物はリスクが高い投資商品です。

穀物相場に投資するメリット

インフレ対策になる

インフレになると貨幣の価値が下がる一方、モノの値段はインフレ率に連動して上がります。資産の一部を商品に投資しておくことは、有力なインフレ対策になるでしょう。

分散効果が期待できる

長期の資産運用をする上で、値動きの異なる複数の資産を組み合わせて保有することは有効と考えられています。穀物などの商品は株式や債券といった伝統的な資産と異なる値動きをする傾向があり、組み合わせて保有することで資産全体のインフレリスクを軽減させること(分散効果)が期待できます。

トウモロコシと小麦の相場に下げ止まり感

以下は、日本経済新聞朝刊3月30日11面から抽出しました。トウモロコシと小麦の相場に下げ止まり感が出ている理由として、以下のことが考えられます。

米国の農家が作付けを減らす意向

主要生産国の米国の農家が作付けを減らす意向が明らかになりました。

農家の意向調査は米農務省(USDA)が毎年3月末に公表します。3月28日に公表された24年の意向によりますと、米国の農家はトウモロコシを前年比4.9%減らし小麦を前年比4.2%減らす見通しとなりました。

価格安とインフレにより生産意欲が低下

トウモロコシ、小麦は、昨年の記録的な豊作に伴う価格の下落と、インフレによる生産コストの上昇が背景にあります。

今回のUSDAによる調査はあくまで調査時点の農家の意向ですが、この通りとなれば米国での供給が減ることになり、価格には上昇圧力がかかります。

トウモロコシの取引要綱と価格の推移(米シカゴ先物)

トウモロコシ先物取引の取引要綱は以下のようになっています。

CME Group

ここでは、過去20年間のトウモロコシ(米シカゴ先物)相場がどのように動いてきたかを表しました。


過去の推移を見て注目されますのは、過去につけた安値に近づいていることです。あらゆる金融商品で見られることですが、過去につけた安値が近づくと買いを検討する投資家が現れます。

 トウモロコシ(米シカゴ先物)相場の月別騰落率

ここでは、トウモロコシ(米シカゴ先物)の月別の騰落率を示しました。

各月別の平均騰落率を見ますと、以下のことが言えます。

  • 2020年4月に安値をつけて上昇したのですが、3月から7月まですべて上昇となり、その後も上昇が続きました。2021年も、4月、5月に上昇となり、その後も上昇が続きました。
  • 2022年4月に高値をつけて下落したのですが、4月から10月まですべて下落となり、その後も下落が続きました。
  • 2023年、2019年、2018年の4月の騰落率を見ますと、小幅な値動きであったことが分かります。

 このように見ると、近年の4月に上昇するか下落するかは、その後の相場を占う上で重要な時期になっていると考えられます。

小麦の取引要綱と価格の推移(米シカゴ先物)


小麦先物取引の取引要綱は以下のようになっています。

CME Group

  ここでは、過去20年間の小麦(米シカゴ先物)相場がどのように動いてきたかを表しました。

過去の推移を見て注目したいのは、やはり、過去につけた安値に近くなっていることです。

 小麦(米シカゴ先物)相場の月別騰落率


ここでは、小麦(米シカゴ先物)の月別の騰落率を示しました。

各月別の平均騰落率を見ますと、以下のようなことが言えます。

  • 2016年に安値をつけた後に小動きとなりましたが、2000年あたりから上昇傾向が目立ちました。2020年は7月から10月まですべて上昇となり、その後も上昇傾向が続きました。2021年は6月から11月にすべて上昇となり、その後も上昇傾向が続きました。
  • 2022年5月に高値をつけて下落したのですが、6月、7月に下落となり、その後も下落傾向が続きました。
  • 2023年は6月、7月に上昇しましたが、8月、9月は下落となりました.。その後も上値の重い展開となっています。

このように見ると、6月から9月あたりに上昇するか下落するかが、その後の相場を占う上で重要な時期になっていると考えられます

まとめ

今回は、穀物相場に投資するメリット、トウモロコシ、小麦の価格に下げ止まり感が出ている理由を述べた上で、過去の推移や月別傾向などを取り上げてみました。穀物相場を占う上で、月別騰落率がどうなっているかはその後の動きを占う上で参考になりそうです。

足元の世界情勢を見ますと、米中対立が改善しないこと、ウクライナ情勢や中東情勢が改善しないことなど不透明要因が多いことからも、株式や債券のみではなく、様々な商品に分散して投資することには意義があるものと考えます。

この記事は投資経済マーケットについて学習および解説をすることを目的に作成されています。 投資や運用の推奨および加入や結果の保証を行うものではございません。 参考資料としてご活用いただき、運用を行う場合は自己責任でお願いいたします。

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