日経平均株価の上昇に出遅れている「東証REIT指数」

日経平均株価は昨年から堅調に推移してきましたが、東証REIT指数はこの動きに大きく出遅れています。今回は、東証REIT指数が日経平均株価に出遅れてきた理由を振り返り、今後の動きを予想しました。今後は反発が期待できると考えます。

目次

Jリート市場発足の経緯

1960年にアメリカで誕生したリートは、その後の制度改正を経て1990年代に市場が急拡大し、有力な金融商品となりました。アメリカに次いで1969年にオランダで、1971年にオーストラリアでリートに関する制度が導入され、世界的にリート組成に向けた制度整備が相次ぎました。

日本では、2000年11月に「投資信託及び投資法人に関する法律」が改正され、主に有価証券となっていた投資信託の運用対象に新たに不動産等が加わり、日本版リート(Jリート)が解禁されました。これを受けて東証では上場審査基準、廃止基準などの上場制度が整備され、2001年3月にJリートの上場市場が創設されました。

「Jリートガイドブック」(東京証券取引所のHP)より抽出。

Jリート投資と実物不動産投資の違い

  • 少額による不動産投資が可能
  • 対象不動産の分散によるリスク軽減
  • 東証Jリート市場でいつでも売買が可能

Jリートの投資判断の尺度

「Jリートガイドブック」(東京証券取引所のHP)より抽出。

NAV倍率(投資口価格 ÷ 1口当たりNAV

NAVとは不動産の時価に基づく純資産価値をいいます。Jリートの投資口価格をその1口当たりNAVで除することで、当該Jリートの純資産価値と比較した投資口価格の水準を捉えることができます。株式の場合は、PBR(株価純資産倍率)という指標を用いて評価が行われますが、NAV倍率はそれに類似した指標といえます。一般的に、NAV倍率が1倍より大きい場合、当該Jリートの価値を実際より高く評価している(割高)ということになります。

 FFO倍率(投資口価格 ÷ 1口当たりFFO)

FFOとは不動産の賃貸純収入をいいます。投資口価格を1口当たりFFOで除することで、Jリートの収益力と比較した際の投資口価格の水準を捉えることができます。株式の場合のPER(株価収益率)に近い指標といえますが、JリートでPERを算出すると保有不動産を売却した場合の損益も含まれるため、不動産市況も踏まえた運用能力全般を評価するには適しているものの、安定的な分配能力を評価するにはFFO倍率が適しています。

分配金利回り(1口当たり分配金額 ÷ 投資口価格)

相対的に高い分配金利回りが期待できることがJリートの大きな特徴であるため、分配金利回りは1つの投資判断の尺度となり得ます。分配金利回りは株式の場合の配当利回りと同種の指標です。他の銘柄や金利商品と比較しながら、投資判断を行うことが必要です。

いずれの指標もホームページ「J―REIT.jp」のマーケット概況で推移を見ることができますが、Jリート市場全体が足元で割安になっていることが分かります。

 「東証REIT指数」とは

東証REIT指数は、株式市場における指標であるTOPIXと同じく東証に上場しているすべてのJリートを対象とする浮動投資口ベースの時価総額加重平均型の指数で、Jリート市場全体の投資口価格の動きを把握できます。

東証REIT指数=(当日の時価総額÷基準日(2003年3月31日)の時価総額)×1,000

東証REIT指数の推移


ここでは、2004年5月以降の東証REIT指数と日経平均株価がどのように動いてきたかを表しました。東証REIT指数が2023年から日経平均株価のように上昇していない背景として、オフィス市況の先行きに警戒感があったことや日本銀行の金融政策に引き締め観測があることなどが挙げられます。

リート指数が上昇していないのは、欧米と共通しています。やはり、オフィス市況の先行きに警戒感があったことや金利が高く推移していること、などが理由となります。

以下は2023年4月9日の紙面(HP)から抜粋しました。

米国のオフィスREITを組み込む指数は一時約14年ぶりの低水準となりました。米欧金融機関の危機に伴う資金の目詰まりや在宅勤務に伴うオフィス需要減退などが根底にあります。

 一方で、最近は以下の動きも見られています。日本経済新聞5月10日朝刊11面から抽出しました。

東京都心5区のオフィス空室率の低下が続く

オフィス仲介大手の三鬼商事が5月9日に発表した4月の東京都心5区のオフィス空室率は、前月比0.09ポイント低い5.38%でした。供給過剰の目安とされる5%に近づいています。

コロナ禍からのオフィス回帰で出社率は7~8割とされます。企業は従業員の満足度を高めるために、充実したオフィスへ移る動きがあります。面積を狭めずに移転拡張や増床する動きが広がっています。

 需給面から見た東証REIT指数

MSCI指数から2銘柄が除外された

米指数算出大手のMSCIは5月15日に、海外機関投資家が日本株投資のベンチマークとする「ジャパン・スタンダード指数」の四半期ごとの銘柄入れ替えを発表しました。

同指数に含まれていたリートは時価総額上位順に7銘柄でしたが、円安によってドル建てでみたJリート市場は縮み、銘柄数は5銘柄に減ります。指数に反映されるのは5月末です。

銘柄入れ替えが行われる前に、外される恐れのある銘柄が売られる傾向がありますが、外されなかった銘柄が買われる場合や、銘柄入れ替えが行われた後に買い戻される場合も多くあります。

日本経済新聞朝刊4月5日19面では「リート市場で自社株買いが広がっている」ことも指摘されています。この動きも今後のリート市場を占う上で需給面でのプラス材料と言えます。

今後の見通し

今回は、Jリート市場が発足した経緯、割安になっていることを述べた上で、東証REIT指数の動きを振り返って見ました。今後は、オフィス需要が高まると予想されること、需給面で好転することがJリート市場を占う上でのプラス材料になります。また、米国で利下げの動きが見え始めれば、米国のリート指数とともに割安であることの修正が期待できそうです。

この記事は投資経済マーケットについて学習および解説をすることを目的に作成されています。 投資や運用の推奨および加入や結果の保証を行うものではございません。 参考資料としてご活用いただき、運用を行う場合は自己責任でお願いいたします。

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