高成長が期待されるインドの通貨、株価指数の動き

今回は、高い成長期待が持たれている国・インドの通貨ルピーの動きと主要株価指数であるSENSEXの動きを取り上げたいと思います。

足元では、総選挙を終えてモディ政権が3期目に入ることから、今後の政策に市場の注目が集まりやすいでしょう。また、世界的に資源高が見られること、インド特有の株式投資の優遇制度などの影響も受けやすいと思われます。

目次

人口増加を背景に高成長を続けるインド経済

以下は、日本経済新聞のHP(5月31日掲載)から抜粋しました。

2023年度の実質GDPは8.2%

インド政府が5月31日に発表した2023年度(23年4月〜24年3月)の実質国内総生産(GDP)の成長率は8.2%でした。2022年度の成長率である7%を上回りました。

インドは人口増加などを背景に高い成長基調が見込まれています

インドの実質GDPは新型コロナウイルス禍に見舞われた2020年度に5.8%のマイナス成長となり、2021年度は反動増もあり9.7%に上向きました。国際通貨基金(IMF)は2025年の名目GDPでインドが日本を抜き、世界4位になると予測しています。

インド準備銀行(中央銀行)は5月30日に発表した報告で、2023年度について「世界経済の低迷や逆風にもかかわらず、インド経済は堅調に拡大した」と指摘しました。個人消費が鈍化する一方、政府によるインフラ支出が内需のけん引役になったとみています。インド準備銀行は2024年度についても7%の成長を予測しています。

ただし、インドでは政府が捕捉しきれていない「インフォーマル(非公式)部門」が労働力人口に占める割合も高いとされます。一部にはGDPなどの経済統計の正確性を問題視する向きもあるようです。

 2014年に発足したモディ政権は製造業振興策「メーク・イン・インディア」を掲げるなど、経済重視の姿勢を示してきました。一方でGDPに占める製造業比率は2割を下回ります。政権が目標としてきた25%を下回る状態が続いています。

 2024年度の世界銀行による実質成長率予測は6.6%

世界銀行は4月2日、インドの2024年度の成長率は6.6%に減速すると予測しました。

2024年度の経済減速傾向の主因について、前年度に拡大した投資の減速が予測されるため、と説明しています。中期的な見通しは明るく、過去の公共投資が民間設備投資を呼び込み、民間消費支出も農業の回復やインフレの減速によって成長が見込まれるとしています。

南アジア地域全体について、2024年(暦年)の経済成長を6.0%、2025年は6.1%と予測しました。インドの牽引により、同地域は今後2年間において全世界で最も急速な経済成長が見込まれる一方、構造的な課題により、持続的な経済成長や域内での雇用創出、気候変動への対応が不足する可能性があると指摘しています。

3期目を迎えるモディ首相

以下は、日本経済新聞6月5日3面、6月6日2面の記事から抜粋しました。

インドでは4月中旬から6月上旬にかけて下院の総選挙が行われました。モディ首相が率いるインド人民党(BJP)は大幅に議席を減らし、単独過半数に届きませんでした。国内では経済格差や若者の失業問題への批判が根強く、モディ首相による政策の実行力が弱まる懸念があります。

インドでは若年層の失業率の高さが問題となっています。インドの産業構成はサービス分野の比率が高く、付加価値が高く雇用も多く生み出す製造業の育成が急務と言えます。

近年は米中対立に伴うサプライチェーン(供給網)の見直しを追い風に、海外からの投資も目立ってきました。外資企業による半導体や電気自動車(EV)の工場建設計画が相次ぎますが、電力や物流などインフラが不十分との指摘は多いです。

 インドの通貨ルピー(対円)相場の推移と今後の見通し

ここでは、インドルピー(対円)相場がどのように動いてきたかを表しました。2020年あたりまでは、コロナ禍による悪影響が懸念されていたことから、下落傾向となりました。その後の回復も、米国での利上げ姿勢を受けて、インドルピーの高値は限られています。インド通貨当局はルピー安方向に為替介入しているようです。

以下は、日本経済新聞5月21日の記事から抜粋しました。

モディ政権の政策によっては財政の健全化路線が緩みかねないとの指摘があります。財政悪化が嫌気されるようだと、海外からの投資が鈍る可能性があるでしょう。

また、原油などの輸入依存度が高く貿易赤字国のインドでは、資源高の影響が懸念されます。

 インドの主要株価指数(SENSEX)が最高値

ここでは、インドの主要株価指数であるSENSEX指数(ボンベイ証券取引所の上場30社で構成する)と36カ月移動平均かい離率の推移を表しました。2020年の新型コロナウイルスの拡大が懸念された場面では一定程度の下落が見られましたが、その後は総じて上昇傾向になっています。

36カ月移動平均かい離率の水準を見ますと、足元は買われ過ぎているとは言えません。今後も、好調な経済や企業業績を背景に堅調な推移が予想されます。

 国内の投資家の買いが入っている

以下は、日本経済新聞6月1日朝刊10面から抽出しました。

最近の株高を支える主体は海外投資家から国内投資家に移りつつあるようです。2023年度は海外投資家がインド株を2兆ルピー超買い越しました。中国株が低迷し、投資マネーがインドや日本にシフトしたと推測されます。今年は海外投資家が売り越し基調になっていますが、SENSEXは堅調に推移しています。

インドでは、機関投資家が株式を買っている上に、個人投資家が国民の所得上昇や企業の利益拡大を背景に貯蓄を資産運用する動きが強まっています。少額から積み立て投資を始められるSIP(システマティック・インベストメント・プラン)などを通じた国内の個人投資家の買いが入っているもようです。

 まとめ

今回述べましたように、インドは人口増加を背景に経済成長が期待できるのですが、財政悪化懸念や資源高の悪影響が予想されることから、通貨ルピーの上値は限られる可能性がありそうです。一方、インド国内の投資家は、株式投資に積極的になっており、株式相場が堅調に推移する期待は持てそうです。

この記事は投資経済マーケットについて学習および解説をすることを目的に作成されています。 投資や運用の推奨および加入や結果の保証を行うものではございません。 参考資料としてご活用いただき、運用を行う場合は自己責任でお願いいたします。

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