有事に強いとされるスイスフランの動きを振り返り、今後を予想

 今回は、有事に強いとされる通貨・スイスフランの動きを取り上げたいと思います。ユーロ相場や新興国通貨に不透明感が出ているなかで、「安全通貨」と位置付けられるスイスフランには資金が流入しやすい場面になっていると思われます。今回は、スイスフランのこれまでの動き(季節的な傾向を含めて)を振り返り、今後の動きについて考えてみました。

目次

スイスの概要

下記は、「みんなのFX」のHPから抜粋しました(一部を編集)。

スイスは中央ヨーロッパに位置する内陸国です。美しい山岳風景は多くの観光客を集めています。「金融立国」として確固たる地位を確立し、チューリッヒ・ジュネーブなどの国際金融都市を中心に世界の金融産業を牽引しています。高い技術水準から「ものづくり大国」としても知られ、スイス発の時計ブランドは、世界的な人気と知名度を誇ります。

多くの方がイメージする「永世中立国」の立場も特色です。1815年のウィーン会議(ウィーン議定書)での永世中立宣言から、国家間の戦争や紛争に参加・関与しない立場であることが国際的に保障されています。

スイスの経済見通し

以下は、JETROのホームページ(昨年12月掲載)から抜粋しました。

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は2023年12月13日、スイス経済見通しを発表し、2024年通年の実質GDP成長率予測を1.1%、2025年を1.7%としました。

輸出産業は2024年にユーロ圏の景気低迷の影響を受け、投資は需要の減少と資金調達コストの上昇に直面して、低調な伸びにとどまるとの見方を示しました。同時に、個人消費支出は今後も景気を下支え、雇用も予測を下回るペースながら増加するとしました。失業率については、景気減速の影響を受けて2.3%と予測しました。

ユーロ相場に不安

ここに来て、ユーロ圏ではフランスを中心に政治不安が高まっています。反EU的な政策が進むようですと、通貨ユーロのマイナス材料になります。ただ、この動きはスイスフランの上昇につながりやすいでしょう。

政局リスクで新興国通貨に不安

6月にいくつかの新興国で、大統領選挙や総選挙をきっかけに、財政や政策運営に対する不安が高まりました。この動きは新興国通貨への売りにつながり、スイスフランの上昇につながる可能性があります。

  • メキシコでは、大統領選挙で与党候補が圧勝しましたが、年金改革など放漫財政に懸念が高まっています。
  • インドでは、総選挙で与党が単独過半数割れになりました。モディ首相の経済改革が遅れる懸念が出ています。
  • 南アフリカでは、総選挙で与党が過半数割れになりました。政治の先行きに懸念が出ています。

スイスフラン(対円)相場の推移

ここでは、スイスフラン(対円)相場のこれまでの動きを表しました。

36カ月移動平均かい離率を見ると、短期的には30%前後が一つの上値メドになってきました。ただし、2003年のように同かい離率が30%に近づいても、その後緩やかな上昇を見せることがありました。

2023年にスイスフランは堅調に推移

2023年は、スイスフランへの投資資金の流入が続きました。インフレ率を差し引いた実質金利が2年半ぶりにプラス圏に転じ、投資妙味が高まりました。数少ない「安全通貨」としてリスク回避を志向する投資家の受け皿となっている点も、スイスフラン相場を支えました。

背景にありましたのは、スイス国立銀行(中央銀行)の積極的な金融引き締め姿勢でした。2023年6月に政策金利を0.25%引き上げて1.75%としました。

政策金利からCPIの前年同月比伸び率を差し引いた実質の政策金利は、昨年6月時点で0.05%と2年半ぶりにプラスになり、マイナス圏に沈む英国やドイツに比べ、投資妙味が高まりました。

2024年に中銀は利下げを行うと共に介入

スイス国立銀行(中銀)は今年3月に、他の主要中央銀行に先駆けて利下げ開始を決めました。利下げはマイナス金利政策を始めた2015年1月以来でした。

5月30日にヨルダン中銀総裁は「スイスフラン安が国内のインフレを加速させる最も可能性の高い要因だ」と言及しました。その上で「外貨を売ることでこのリスクに対抗し得る」と強調しました。介入への警戒感が高まり、スイスフランの上昇につながりました。

スイスフラン(対円)の季節的傾向

各通貨は、月別などで見るとある程度の傾向が見て取れることがあります。こうした時間軸で通貨の動きの傾向を見ていくことは軽視できないと考えます。

今回は、過去のスイスフランの月別の騰落率はどうであったのか、また各月の動きはその後の推移に影響を与えたのかなどを調べてみました。その後の推移に影響を与えている月があると思われます。

2、3、4、6月に上昇することには良好な経験則がある

表の下の平均騰落率は、スイスフラン(対円)が上昇傾向にあった2009〜2014年、下落傾向にあった2015〜2019年、上昇傾向にあった2020〜2023年で平均を取ったものです。 

2009〜2014年、2020〜2023年に上昇傾向にあり、2015〜2019年に下落傾向が表れている月、つまり中長期的な方向性とよく一致した月は、2月、3月、4月、6月、10月でした。

足元では、2024年4月から6月に上昇しているのですが、過去の経験則からはこの時期に上昇したことは今後のスイスフラン(対円)も上昇しやすい傾向があると言えそうです。

2015年に高値を付けたのは1月でした。1998年に高値を付けたのは10月でした。世界経済の不透明感が晴れるのはまだ先になりそうで、スイスフランへの資金流入はまだ続きそうです。

近年の夏場は悪くない傾向

米国などの株式市場では、「夏枯れ」という言葉があり、多くの投資家が夏休みに入ることから、7月や8月に上昇しにくい傾向があります。

一方、近年の夏場のスイスフラン(対円)は、しっかりと推移する年が見られています。

まとめ

今回、取り上げましたように、ユーロ相場や新興国通貨に不透明感が出ているなかで、「安全通貨」と位置付けられるスイスフランは上昇しやすい場面になっていると思われます。スイス国立銀行の方針、過去の季節的な傾向などから見ても、目先のスイスフランは上昇が期待できそうです。

この記事は投資経済マーケットについて学習および解説をすることを目的に作成されています。 投資や運用の推奨および加入や結果の保証を行うものではございません。 参考資料としてご活用いただき、運用を行う場合は自己責任でお願いいたします。

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