日経平均株価採用銘柄は定期見直しされる
日本株投資をしている人であれば知らない人はいないであろう日経平均株価。
毎年9月上旬に定期見直し結果が発表され、10月第1営業日から入れ替えられていました。
入れ替え対象銘柄は、日経平均株価連動資金による取引が発生するため、日本株投資家であればその予想や結果に注目する人が少なくないはずです。
ちなみに筆者はあとから示す指数としての「いびつさ」をはじめとしていくつかの理由でこの指数が好きになれないので、日経平均株価の数字を意識はしますが、自分の運用のベンチマークにはしていません。
ひっそりと算出要領が変わっていた
その日経平均株価は算出要領が公表されています。
出典:日本経済新聞社 website
そして、最新版の日付は2022年9月29日付です。
最新版でひっそりと変わっていることがあります。
一つは「定期見直し」の回数です。
2022年まで年1回でしたが、最新版から年2回になりました。
4月と10月に実施です。
なお、定期見直しでは入れ替え銘柄数の上限が3銘柄以内と決められています。
出典:日本経済新聞社 website
もう一つの変更が「キャップ調整比率」の導入です。
「キャップ調整比率」とは
キャップ調整比率は、ウエート(構成比率)が一定の水準(「キャップ水準」)を超えた銘
柄のウエートを一時的に引き下げるための数です。
特定の銘柄のウエートが高くなりすぎないようにする配慮といえます。
2022年10月の定期見直しから導入されており、段階的に以下の値を用いることになっています。
・導入時(2022 年 10 月の定期見直し)「12%」
・2023 年 10 月の定期見直しから「11%」
・2024 年 10 月以降の定期見直しでは「10%」
定期見直しの基準日時点のウエートがキャップ水準を超えた銘柄については、当該定期見直しの適用日にキャップ調整比率を設定し、その値を 0.9 とします。
すでにキャップ調整比率が設定されている場合は、同比率をさらに 0.1 引き下げます。
一方、定期見直し時にウエートが5%を切っている銘柄に対してキャップ調整比率が適用されている場合は、キャップ調整比率を引き上げます。
現時点では「キャップ調整比率」を意識しなくてよさそう
2023年4月の定期見直しの基準は2023年1月末です。
筆者がこの原稿を書いているのは2023年1月下旬です。
現時点での、日経平均株価採用銘柄の構成率上位を確認しましょう。
出典: https://nikkei225jp.com/nikkei/
2023年4月の定期見直しのキャップ調整比率導入の目安は12%ですから、現時点で導入に該当する銘柄はありません。もちろん株価の変化によって、12%を超える銘柄が出てくる可能性がないとは言えません。
日経平均株価を改めて考察
この図の構成率をみるとよくわかりますが、日経平均株価は225銘柄で構成されているにもかかわらずごく少数の銘柄のウエートが非常に高い株価指数です。
かつてファーストリテイリング(9983)は10%をしばしば超えており、発行体が意図しないところでファーストリテイリングの株価の動きが指数を左右する銘柄になっていました。
これは、日経平均株価がかつて「みなし額面」という概念を導入していた名残です。
2001年10月の商法改正で廃止されるまで、株式にも額面がありました。
額面が50円の場合は、会社を設立して株式を発行した時、投資家が1株あたり50円を支払って株式を購入したことを示していましたが、その後いくつかの理由があって、額面株式は廃止されすべて無額面株式になっています。
額面制度廃止までの日経平均株価は、構成銘柄の株価を標準的な額面である50円の水準に調整していましたが、額面制度廃止以降は、廃止された額面制度を模したみなし額面を設定し、旧制度と同じく50 円額面の水準にあわせて調整していたのです。
「みなし額面」は2021年の日経平均株価算出要領改訂時に「株価換算係数」と名を変えました。
株価換算係数の導入時は、その時点の構成銘柄に対して設定されていたみなし額面を基準に、調整後の株価が原則として同じ値となるように設定したのです。
よって、2021年9月30日までの採用銘柄については株価換算計数=1で引き続き算出されています。つまり、ファーストリテイリングや東京エレクトロン(8035)らに、何ら変化はありません。
ファーストリテイリングの株価は5ケタですが、かつてのみなし額面は50円です。
株式分割があれば、みなし額面も分割されていました。
ちなみにキヤノン(7751)のかつてのみなし額面は50/3でした。
過去に3分割されたことがあるからです。
ファーストリテイリングも2023年2月末時点で3分割が予定されていますので、キヤノンと同様になるでしょう。
新たに採用される銘柄については、株価換算係数が導入される可能性があります。
2022年10月の定期見直しでは、新たに採用された3銘柄に、1ではない株価換算係数が与えられています(採用銘柄の右側の数字)。
いわゆる「みなし額面」に対して、株価が高い銘柄は、日経平均株価に与える影響が大きくなることを抑制するためのものです。
まとめ
2023年から日経平均株価の定期見直しが2回になる
1回の定期見直しで入れ替えられる銘柄は上限3銘柄
ウエートが極端に高い銘柄に関しては今後キャップ調整比率が導入される可能性あり