コロナ禍以降の業種別株価指数の動き

株式市場を見る上で、どのような銘柄が物色されているのかを知るには、様々な株価指数を見る必要があります。JPX日本取引所グループは、株価指数として規模別の株価指数、業種別の株価指数、東証マザーズ指数など多くの株価指数を日々公表しています(JPX日本取引所グループのHP「リアルタイム株価指数値一覧 」で見ることができます)。

同じ日本株でも、株価指数によってその値動きは大きく異なることがあります。各株価指数を見ることによって、同じような分類の銘柄が上昇しているのか、循環的に様々な分類の銘柄が上昇している(循環物色されている)のかが分かり、物色の変化などをつかみやすくなります。

株式投資をする上では、各株価指数の動きをよく見ておきたいところです。今回は、コロナ禍以降のいくつかの東証業種別株価指数の動きについてまとめて見ました。また、今後の有望な業種について考えてみました。

目次

2つの業種別株価指数

業種別株価指数は、上場企業を業種毎に分類して算出する株価指数のことです。これは、株式市場の業種別の動きをつかむのに役立つもので、現在、日本株については、「東証業種別株価指数」と「業種別日経平均」の二つがよく使われています。

東証業種別株価指数

東証業種別株価指数は、東証株価指数(TOPIX)を補完する株価指数の一種で、TOPIXに採用されている銘柄を、証券コード協議会が定める33業種に基づき、各業種別に分類した、時価総額加重方式により算出される株価指数です。

この33業種は、17種類に集約した株価指数「TOPIX-17」にも分類され、17つの指数に連動するETFが上場されています。

業種別日経平均

業種別日経平均株価は、日経500種平均株価の500銘柄を対象として、「日経業種中分類」により36種に分けて、算出される株価指数です。

コロナ禍以降に堅調に推移した業種

コロナ禍でも堅調であった海運業

海運業は、船舶による海上輸送や関連するサービスを提供する業種です。世界的な貿易の動向に大きな影響を受けやすい傾向があります。また、船舶の供給過剰や需要不足によって価格競争が激しくなり、株価が下落することもあります。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた混乱が一服し経済活動が再開された際、一気に需要が増えたことで物流がひっ迫し海上運賃が急騰しました。また、ロシアによるウクライナ侵攻によって世界的なタンカー不足(供給不足)も見られました。海運株は、こうした中で堅調に推移してきました。

最近好調さを見せる卸売業

卸売業は、製造業者や輸入業者から商品を仕入れて、小売業や企業に卸す業種です。景気動向や需要の変化に影響を受けやすく、景気が好調であれば需要が増加し、反対に景気が悪化すれば需要が減少します。

4月上旬に,著名投資家のウォーレン・バフェット氏が大手商社株の保有比率を上昇させたことに言及したことで、卸売株はその後大きく上昇しました。

輸出関連株は、4月以降大きく上昇

海外では、景気の回復が日本より早かったこと、円安の動きが見られたことから、輸出関連株の中には、コロナ前につけた高値を超える業種が見られています。

自動車ではEV関連、ハイテクでは、米国での金融政策・経済指標、生成AIなどの材料に敏感に反応しています。

  • 電気機器

電気製品の製造、販売を行う業種です。家電製品、電力関連機器、半導体製造装置などが含まれます。自動車メーカーや家電メーカー、半導体メーカー、通信機器メーカーなど顧客も多様で、それぞれの顧客からの需要変動に敏感に反応します。

  • 輸送用機器

輸送用機器は、自動車、航空機、鉄道車両、船舶など、輸送に関する機器を製造・販売する業種です。経済成長や需要拡大に伴い、輸送需要が増加すると需要が伸びる傾向があります。

コロナ禍以降の戻りが鈍い業種

サービス業

サービス業は、内需系企業が多く、幅広い業種を含んでいます。サービス業をさらに分類すると、EC(電子商取引)、インターネット、人材派遣、BPO(業務の一部を外部に委託する手法の1つ)、介護、警備、広告、レジャー施設、旅行などに分かれます。

EC、インターネット、人材派遣などはコロナ禍でも堅調な業績を示しましたが、今後は旅行、レジャー施設(テーマパークなど)への需要が増えるかが注目されます。

陸運業

陸運業は、物流や旅客輸送など、陸上での運送業務を行う企業を指します。経済活動の活発化によって需要が拡大し、景気の影響を強く受けやすい業種です。また、燃料価格や運賃の値動きにも敏感に反応します。

最近は、宅配便大手各社の株価が運賃を値上げしたことや自社株買いを行ったことなどを好感し始めています。さらに、鉄道各社の株価の回復も期待できると考えます。

空運業                                                           

航空機を用いた輸送サービスを提供する業界です。具体的には、航空会社や空港運営会社、航空機メーカーなどが含まれます。代表的な企業は、日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)などとなります。燃料費や人件費が大きなコストとなります。

今後は、国内、海外からの観光客による消費が期待できます。

今後の業種別株価指数の展望は

4月終盤以降の日本の株式市場は、日本の金融緩和政策の継続を背景にした円安の動きや、各企業が資本効率を意識した動きを活発化させていることなどがプラス材料として存在してきました。相場を引っ張ったのは、卸売業、輸出関連の業種などでした。

しかし、海外の景気は必ずしも強気一辺倒であるとは言えないでしょう。これまで上昇してきた業種(輸出関連株など)は、海外景気の動向、米国の金融政策の行方などに左右されそうです。

一方、これまでコロナ禍からの回復が鈍かった業種については、(コロナ禍からの)経済再開が順調に進むのなら戻り余地があるものと考えます。陸運、空運などは円安の動きをマイナス材料視してきましたが、今後はインバウンド(訪日外国人)消費の増加が確認されれば、株価はこれを好感するでしょう。


URLをコピーする
URLをコピーしました!

この記事を書いた人

本メディアを運営する「金融商品を売らない投資と財務の専門家」、BFPホールディングスです。

投資や財務の学習・計画補助・コンサルタントをご希望の方は、「こんなこと相談していいのかな・・・?」とお悩みになられる前にご連絡ください。

目次
閉じる