日経平均株価算出要領 マイナーチェンジ(2023年10月)

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改めて日経平均株価とは

日本株投資をやれば嫌でも耳に入ってくる指数が日経平均株価です。

日経平均株価は東証プライム市場に上場する225 銘柄を選定し、その株価を使って算出する価格平均指数です。

225銘柄は、市場流動性やセクターバランスをもとに定期的に見直されます。(日経平均株価算出要領より抜粋)

流動性とセクターバランスが選定基準なので、過去何期かにわたって赤字決算でも除外されないことがままあります。

近年で言えばSBG(9984)や楽天G(4755)がこの例に該当します。

株価=EPS×PER ならば、EPSがマイナスである赤字決算企業の株価は芳しくないはずで、価格平均指数である日経平均にはネガティブ寄与します。

そんな理由で、筆者は日経平均株価を数字としては把握するものの、それほど重要視していません。

とはいえ、先物の残高が多いとか、よく知られているという理由で日本株市場を反映する値として用いられがちなことも事実です。

近年日経平均株価算出要領が少しずつ変化している

その日経平均株価は近年何度か算出要領がマイナーチェンジされています。

かつては年1回だった採用銘柄の定期見直しは現在年2回になっています。

出典:日経平均株価算出要領

そして2023年10月にも算出要領が一部変更されます。

変更点1) 

売買代金が相対的に少ない新規採用銘柄に「分割採用」を導入

新規採用時に想定される日経平均株価への組み入れウエイトに対して、売買代金が相対的に少ない銘柄については、指数への組み入れを2回に分ける「分割採用」をします。

目的は採用時のインパクトの低減です。

新規採用時の株価換算係数を当初予定した値の1/2で設定し、2回目の組み入れは次回の定期見直し時(つまり半年後)に、株価換算係数を当初予定した値に引き上げます。

変更点2) 

「テクニカル上場」銘柄の採用時は上場日に入れ替え

「テクニカル上場」とは、上場会社が非上場会社と合併して解散する際、もしくは株式の交換などで非上場会社の完全子会社になる場合に、非上場会社の株式をスムーズに上場させる制度のことです。

持ち株会社化など企業再編に伴い日経平均の構成銘柄が上場廃止となった後、事業実態

を継承する会社が速やかに新規上場(いわゆるテクニカル上場)する場合に、当該構成銘柄

に代えてその新規上場会社を採用する際には、原則として採用銘柄の上場日(通常は上場廃

止日から2営業日後)に入れ替えるルールが追加されます。

この場合、当該構成銘柄は、新会社が上場するまでの間、上場廃止後も指数の構成銘柄に

とどまり続けます。上場廃止後、入れ替えまでの間は、上場廃止前日の日経平均の終値算出

に用いた株価で日経平均を計算します。

これまでは、上場廃止日に当該構成銘柄を除外する一方で、事業実態を引き継ぐ新規上場

会社を新規上場翌日に採用していました。除外と採用が同日ではないため、その間は日経平

均を224銘柄(対象が1銘柄の場合)で算出していました。

変更により想定される影響

2)に関しては合理的だと思います。

数日だけ銘柄数が変わるのも妙な気がしていました。

テクニカル上場により銘柄コードが変わることがあるのでその点には気を付けたいところです。

1)は指数への算入が2回になることで、当該銘柄の株価に関しては日経平均株価連動資金の買いが2回起きることになるという、今までになかったことが起きそうです。とはいえ、売買代金は採用銘柄を決める際に重要なファクターです。そもそも売買代金が相対的に少ない銘柄が採用されるのか?と感じました。

わざわざこんなルールを設けるからには、そのような銘柄の採用が見込まれているんだろうかと邪推したくもなります。

ファーストリテイリング(9983)がキャップ調整比率対象になるか?

2022年10月から採用された日経平均株価のルールがあります。

「キャップ調整比率」です。

キャップ調整比率は、ウエイト(構成比率)が一定の水準(「キャップ水準」)を超えた銘柄のウエイトを一時的に引き下げるための数です。

特定の銘柄のウエイトが高くなりすぎないようにする配慮といえます。

段階的に導入されることになっています。

2023年10月の定期見直しでは11%を超える場合にキャップ調整比率の対象となります。

かつて、「2023年からは4月にも日経平均株価採用銘柄見直しが」で、キャップ調整比率に言及した際、当時の状況を鑑みて当面意識しなくてもよさそうだと書いたのですが、2023年7月21日時点ではやや意識する必要がある状況だと考えています。

ファーストリテイリング(9983)のウエイトは10%超です。

春以降のファーストリテイリング株の上昇が日経平均株価におけるウエイト増の理由です。

出典: https://nikkei225jp.com/nikkei/

2023年7月末時点で11%を超えるようであれば、キャップ調整比率の対象となり、ファーストリテイリング(9983)のウエイトが定期見直し時に下げられることになります。

つまりファーストリテイリングの売り需要が発生します。

この記事が公開される頃には、この件についての見通しが明らかになっていることでしょう。

9月上旬に定期見直し対象銘柄発表予定

2023年10月実施の定期見直し対象は、9月上旬に発表されます。

新規採用銘柄の買い需要が発生する一方、除外銘柄の売り需要が発生するイベントでもあることを覚えておきましょう。

まとめ

近年日経平均株価算出要領が少しずつ変化している

売買代金が相対的に少ない新規採用銘柄に「分割採用」が導入される

ファーストリテイリングの株価に要注目

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この記事を書いた人

大学講師兼投資ライター
システムエンジニア->証券アナリスト->地方公務員->セミリタイアな中小企業の嘱託研究員->大学講師

CFP、FP1級、日本証券アナリスト協会認定証券アナリスト保有。
TOEIC950。MBA取得済。投資歴31年余り。

システムエンジニア時代に投信売買システム、生命保険契約管理システムに携わり、それらのしくみにも精通。
趣味はサッカー観戦(川崎Fサポ)、旅、読書、野菜栽培、フラワーアレンジメント。
がんサバイバーでもある。

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