NYダウと金相場・銀相場の関係を振り返り、今後の動きを予想

中東情勢が緊迫していることや、米長期金利が上昇していることから、NYダウをはじめ世界の株式市場は、このところ軟調に推移しています(2023年10月26日執筆時点)。今後数カ月間も、これらの情勢(中東情勢、金利上昇による影響が出ないかなど)を見極めようと、世界の株式相場は上値が重くなる可能性がありそうです。こうした場面で、NYダウに連動しない傾向がある資産として、金相場の行方に注目したいと思います。今回は、金相場と近い性質のある銀相場の動きにも注目してみました。価格の推移(チャート)を見ますと、注目したい点があります。

目次

金とは

希少性が高く腐食しない金は、古くから通貨や宝飾品として用いられ、また、加工しやすく電気抵抗率が低いため、パソコンなどの電子工業用素材としても堅調な需要があります。
世界の主要な金市場(ロンドン・香港・東京・ニューヨーク)で絶え間なく取引が行われ、国際商品としては、原油と並ぶ経済指標の一つとして注目されています。実物資産として発行体の破綻リスクが存在しないため、有事の際には、資産の緊急避難先(ラスト・リゾート)としての役割を果たします。

参考:日本取引所グループのホームページ「金とは」

金投資のメリット

  • 安全資産として見られている

金相場は、世界情勢の変化に強く、株安や紛争、テロなどが起きると安全資産として金を買う人が増えるため、価値が上がる傾向があります。

最近では、コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻では安全資産としての金に注目が集まり、金価格の上昇要因になりました。

  • インフレに強い
  • 信用リスクがない(無価値にならない)
  • 価値基準が世界共通

「金投資のメリット」につきましては、当サイト2023年8月21日掲載の「金相場の動きを振り返り、今後の動きを予想する」でより詳しく述べました。

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金先物(NY)の推移

ここでは、2003年12月以降、金価格(NY金先物)がどのように動いてきたかを表しました。金価格が高値をつけたのは、リーマンショックの後の2011年、新型コロナウイルスによる悪影響が懸念された2020年などとなっています。つまり、NYダウが強くないときに金は高値をつけてきました。

2003年あたりからの上昇が特に大きいのは、中国・インドでの金の消費量が増加したことが挙げられます。

金価格の過去の高値を見ますと、2011年の高値が1915ドル台、2020年の高値が2089ドル台、2023年5月の高値が2102ドル台となっています。上値を徐々に切り上げています。

一方、下値は2008年の安値が681ドル台、2015年の安値が1046ドル台、2022年が1622ドル台と下値を切り上げています。36カ月移動平均線の前後でよく下げ止まってきたことも読み取れます。

足元は、上値と上値を結んだ線(上値抵抗線)、下値と下値を結んだ線(下値抵抗線)の間での推移となっています。2つのラインが徐々に狭まっていることも分かります。

こうした場面では、上値抵抗線を上抜くか、下値抵抗線を下抜くかが注目されます。今後動いた方向にしばらくの間動きやすいとの指摘がなされることがあります。
相場では「三角もちあい上放れ」、「三角もちあい下放れ」、あるいは「もちあい放れにつけ」と言った表現で語られることがあります。

銀とは

金と共に古代から通貨や宝飾品のほか、高級食器の素材としても珍重されてきました。また、金よりも割安で、時折高い投資効率が期待できる状況が発生することから、俗に「貧者の金」と称され、投資用貴金属としても根強い人気があります。
しかしながら、銀の最大の特徴は、工業用金属としての重要性であり、電子工業用部材、太陽光発電パネルの電極材、写真フィルムなどの工業用途に使用されています。そのため、銀の価格は、銀を使用する工業製品の生産量や世界の景気動向の影響を強く受けます。

(参考:日本取引所グループのホームページ「銀とは」)

銀投資のメリット

  • 金と同様に貴金属であり、工業用に利用されており、無価値になることはまずない
  • 金と比べて値動きが大きいため、利益を得るチャンスが多い
  • インフレに強い

銀先物(NY)の推移

ここでは、2003年12月以降、銀価格(NY銀先物)がどのように動いてきたかを表しました。銀価格が高値をつけたのは、金と同様に、リーマンショックの後の2011年、新型コロナウイルスによる悪影響が懸念された2020年などとなっています。つまり、NYダウが強くないときに高値をつけてきました。金相場と数カ月ずれることがありましたが、高値や安値をつける時期が近くなってきました。

銀価格の過去の高値を見ますと、2011年の高値が49ドル台、2020年の高値が29ドル台、2023年5月の高値が26ドル台となっています。上値を徐々に切り下げています。

一方、下値は2008年の安値が8ドル台、2020年の安値が11ドル台、2022年が18ドル台と下値を切り上げています。36カ月移動平均線の前後でよく下げ止まってきたことも読み取れます。

足元は、やはり、上値と上値を結んだ線(上値抵抗線)、下値と下値を結んだ線(下値抵抗線)の間での推移となっています。2つのラインが徐々に狭まっていることも分かります。

こうした場面では、上値抵抗線を上抜くか、下値抵抗線を下抜くかが注目されます。今後動いた方向にしばらくの間動きやすいとの指摘がなされることがあります。

金価格と銀価格の比率の推移

金価格と銀価格を比較しますと、連動する場面は多かったのですが、足元の銀の価格は金の価格に比べて相対的に安くなっています。ここでは、1980年からの「金価格÷銀価格」の推移を示しました。2011年4月は金の価格が32倍でしたが、2023年9月は84倍になっています。

理由として以下の2つの点が日本経済新聞10月18日19面に掲載されていました(内容の一部を抽出)。

  • 金価格に比べて銀価格が相対的に安くなっているのは、工業用向けの用途が5割ほどの銀に比べ、工業用向けの用途が1割ほどの金の方が景気動向の需要に左右されにくいことが原因となっている。主要な需要国である中国に景気後退への懸念が売りにつながっている。
  • 中国を含む新興国の一部でドル離れの動きが起こり、中央銀行が金の買い手となっている。

また、以下の点も同じ紙面に掲載されていました。

  • 国際調査機関シルバー・インスティチュートによると、銀は2023年に太陽光向けの需要が伸びていることから、供給不足になることが見込まれている。

今後の見通し

金相場も銀相場も、過去の推移を振り返ると、NYダウなど世界の株式相場の上値が重い場面でともに上昇する可能性があります。文中で述べましたように、上値抵抗線を上抜けると勢いが出る可能性もあると考えられます。銀は、中国景気の悪化を嫌気する面もありますが、貴金属である点は金と共通であり、供給が不足しているとの報道もあり、金に比べて弱く推移し続ける可能性は低いものと考えます。

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