日本の半導体株などの動きを見る上で、米国のSOⅩ指数(フィラデルフィア半導体株指数)の動向を参考にする投資家は多いでしょう。最近は、特に注目度が高くなっています。
今回は、SOⅩ指数のこれまでの推移を振り返り、今後はどのように推移しやすいかを考えました。月別の騰落率はどうであったのか、また各月の動きはその後の推移に影響を与えているかについて調べてみました。やはり、その後の推移に影響を与えやすい月があると思われます。
OⅩ指数について
以下はiFinanceのホームページから抽出しました。(https://www.ifinance.ne.jp/glossary/index/ind136.html#sox3)
SOX指数は、米国株式市場に上場する、半導体の設計や製造、流通、販売を手掛ける、代表的な企業の株式(30銘柄)で構成される時価総額加重平均型指数のことです。米国のNASDAQが算出・公表し、世界の半導体関連の代表的な株価指数となっています。
近年、半導体が使用される産業は幅広く、パソコンやスマートフォン、電気製品、機械器具、自動車など多岐にわたり、半導体は「産業の米」とも呼ばれています。
シリコンサイクルとは
以下は、日本経済新聞朝刊1月5日3面より抽出しました。
好況と不況が3〜4年程度の周期で入れ替わる半導体市況の特徴を指します。半導体は技術革新のスピードが速く、好不況の波の変動が大きくなりやすくなっています。
半導体需要の5〜6割を占めるスマートフォンやパソコンがサイクルをつくってきましたが、新型コロナウイルス禍では供給網が混乱した上、巣ごもり消費などで需要の変動幅も大きくなり、2021年以降に世界的な半導体不足を招きました。
SOⅩ指数のこれまでの動き
図は、SOX指数の動きとその36カ月移動平均乖離率の推移を示したものです。SOX指数の推移を見ますと、2000年3月のITバブルと言われた場面で高値をつけた後は、リーマンショックのあった2008年まで軟調に推移しました。その後はコロナショックの影響を受けた2021年までほぼ上昇傾向となりました。
36カ月移動平均かい離率の推移を見ますと、2000年3月にプラス240%まで上方にかい離した後、2008年にマイナス60%台まで低下しました。その後は2021年まで水準を徐々に切り上げてきたことが読み取れます。2022年の下落場面では、やや水準を切り下げました。今後は80%台まで上昇するかどうかに注目したいと思います。
大きく変化した場面
- 1995年あたりはインターネットの普及期で、2000年に高値をつけた背景となりました。
- 2009年あたりはスマートフォンの普及期で、その後の上昇基調につながりました。
- 足元では、生成AIの普及が注目されています。
- 2023年は、在庫調整が見られたため、2021年の高値を意識して足踏みを見せる場面がありましたが、昨年終盤には「在庫調整が一巡した」との見方から再び最高値を更新しました。
今年2月は、大手半導体関連企業のエヌビディアの2023年10-12月期の好決算が発表されたことなどを受け、SOX指数は一段の上昇を見せました。
月別に見たSOX指数の騰落率
ここでは、SOX指数の月別の騰落率とともに、2001~2024年での平均騰落率を示しました。
2月に上昇したことには比較的良好な経験則がある
2月のSOX指数の動きは、前年10~12月期の経済指標や主要企業の決算が発表される時期なので重要だと考えます。
2月のSOX指数の騰落状況は、2001~2024年で見て16勝8敗、平均騰落率はプラス0.8%となっています。過去の動きを見ますと、2月のSOX指数の動きはその後のSOX指数の推移の参考になるのではないかと考えます。
- SOX指数は、2000年に高値をつけ、2008年に安値をつけましたが、2001年から2009年までの2月は3勝6敗でした。
- また、2021年に高値をつけましたが、2010年から2019年までの2月はすべて上昇となりました。
- 2020年からの2月は上昇する年と下落する年が混在するようになり、動きは複雑になりました。
- 2021年2月に下落し、2022年9月に安値をつけました。
正確な予測ができるとは言えないものの、2月のSOX指数が上昇するか下落するかは、その後のSOX指数の動きを予測する上である程度参考になりそうです。
今年の2月は大きく上昇しましたので、今後も堅調に推移する期待が持てそうです。
2月相場の動きを引き継ぐ傾向がある3月相場
3月のSOX指数の騰落状況は、2012~2023年の12年のうち10回は2月相場の上昇下落と一致しました。異なったのは、2015年と2018年でいずれも小幅な下落にとどまりました。
最近よくない傾向がある4月相場
4月のNYダウは上昇しやすい傾向があるのですが、4月のSOX指数は近年、よくない傾向があります。2014~2023年で見て2勝8敗となっています。ただ、4月のSOX指数の動きは、その後の相場にはあまり影響しないと思われます。
最近よい傾向がある5月相場
5月のSOX指数の騰落状況は、2013~2023年で見て10勝1敗で平均騰落率はプラス5.5%でした。今年の5月も、1-3月期の決算発表、経済指標の発表があり、今年2月のように堅調に推移する期待が持てそうです。
従来はよくない傾向があった6月相場
6月のSOX指数の騰落状況は、2001~2023年で見て5勝15敗、平均騰落率はマイナス2.1%となっています。最近5年では2022年を除いて上昇となっています。
各月とその後のSOX指数の動き
各月とその後のSOX指数の推移を見ますと、3月、4月、6月にいずれも下落し、秋口に再び下落するケースが目立ちます。2015年、2018年、2022年に見られた動きです。シリコンサイクルで述べましたように、3~4年に1度こうした年が見られています。
今後のSOX指数の見通し
今後の世界の半導体関連株の先行きを占う上では、生成AIが世界のビジネスを期待通りに変えるかを見極めたいところです。
過去のSOX指数の月別の騰落状況を見る限り、1-3月期の決算発表が行われる5月あたりに再び上昇する期待が持てそうです。
一方、NYダウなどで見られる傾向と同様に、秋口には下落しやすい傾向があることも意識しておきたいと考えます。3月、4月、6月にいずれも下落するようだと、特に良くない経験則があります。