近年、日本で長く続いている低金利環境に変化が見え始めています。
金利が上昇する局面では、不動産投資家や経営者にとって「どのように資金を借り・返していくか」が以前よりも重要になってきます。
本記事では融資を活用する際に知っておきたい基本的な返済方法や、金利上昇時代に注意すべきポイントについて財務・投資家目線から解説いたします。
融資返済方式に関するアンケート結果
先日、不動産投資かの方々を対象に「融資を受ける際、どの返済方式を利用していますか?」というアンケートを実施しました。
その結果最も多かったのは「元利均等方式」で全体の54%を占めました。
一方で「元金均等方式」を選んでいる方は20%にとどまり、その他「どちらかわからない」「回答保留」といった方も見受けられました。
元利均等方式と元金均等方式の違い
まず押さえておきたいのが、両者の基本的な仕組みです。
〇元利均等方式:毎月の返済額(元金+利息)が一定になるよう計算される方式。
→ キャッシュフローを安定させやすく、目先の資金繰りを重視したい人向け。
〇元金均等方式:毎月の元金返済部分が一定で、利息は残高に応じて変動。
→ 元金の減りが早いため総返済額が少なく、長期的な資産形成で有利。
つまり「目先のキャッシュフローを優先するか」「長期的な総返済額を抑えるか」で選択が変わります。
総返済額の差を数字で見る
具体的にどれくらい差が出るのか。
条件を「20年・金利2%」として、3,000万、6,000万、1億円を借りた場合で比較すると、最終的な返済額は1.2〜1.4%程度変わります。
「1%ちょっとの差なら大したことない」と思うかもしれません。
しかし不動産投資で経済的自由を目指すなら、総借入額は5億〜10億円規模になることも珍しくありません。
その場合、わずか1〜2%の差で500万〜1,000万円も最終的な純資産に差が出ます。これは「売上で1,000万円」ではなく「純資産で1,000万円」ですから、資産形成において大きなインパクトとなります。売上で1,000万なら経費などで消えてしまう部分もありますが、純資産で1,000万円変わるのは極めて大きな違いです。
しかも借入年数が30年に伸びたり、金利がさらに上昇すれば、この差は2〜3%、場合によっては4%近くまで広がる可能性があります。
月々の返済額の違い
次に「毎月のキャッシュフロー」への影響です。
同じ条件(20年・金利2%)で3,000万円を借りると、元利均等と元金均等で約2万5,000円の差が出ます。
6,000万円なら5万円の差です。
年間に直すと3,000万円の借入で約30万円、6,000万円なら60万円。
不動産投資の利回り計算は1%単位でシビアに検討されることが多いため、この差がキャッシュフローや投資判断に大きな影響を及ぼします。
もちろん元金均等方式では月々の返済額が徐々に減っていきますが、借り始めのタイミングではこの差が重くのしかかる点を押さえておく必要があります。
税務上の見方と戦略の違い
返済は「元本」と「利息」に分かれます。
経費計上できるのは利息のみで、元本部分は経費になりません。
この仕組みによって、帳簿上の利益に見え方の違いが生まれます。
元金均等方式では返済に占める元本の割合が大きくなるため、利益が大きく見えやすく、その分税負担が増える可能性があります。
言い換えると、
- 節税して現預金を積み上げたい派 → 元利均等方式が有利
- 納税してでも利益を積み上げ、融資を拡大したい派 → 元金均等方式が有利
という構図になります。
どちらが正解という話ではなく、経営方針や投資戦略によって選び方が変わるのです。
金利上昇局面での有利な選択
金利が上がる局面では「元金均等方式」のメリットがより際立ちます。
元本の減りが早いため、将来の利息負担増を抑える効果があるからです。
もちろん「今はまずキャッシュを確保しないといけない」という段階の投資家にとっては、元利均等方式が合理的です。
一方で、すでに複数物件を持ち、事業が安定している投資家にとっては、元利均等方式のままでは節税効果はあっても資産形成のスピードは遅れます。
そうした場合は元金均等方式にシフトすることが、将来的な純資産形成に有利となるのです。
まとめ:あなたはどちらを選ぶか?
元利均等方式は「目先のキャッシュフロー重視」
元金均等方式は「総返済額削減・長期的資産形成重視」
金利上昇局面では元金均等方式の優位性が増す
ただし最適解は投資家それぞれの状況と戦略次第
また、銀行に融資を打診する際には「金利が何%上がったら返済額はいくらになるか」というシミュレーションを提示する投資家も増えています。
ネット上の返済シミュレーターや関数電卓を使えば計算は容易です。
不動産投資において重要なのは、「どちらが正しいか」ではなく「自分の事業フェーズや目的に合っているか」です。
キャッシュフローを優先するのか、長期的な純資産形成を優先するのか。
今の自分にとってどちらが有利かを考え、銀行への交渉材料としても活用してください。
