あの銘柄もすでに
トヨタ自動車(7203)、任天堂(7974)、ファーストリテイリング(9983)、オリエンタルランド(4661)に共通する事柄があります。
2021年~2022年に株式分割を発表した大型株であるということです。
ちなみに筆者が言う大型株とは下の図が示す「TOPIXニューインデックスシリーズ」でCore30とLarge70採用銘柄で構成されるいわゆるTOPIX100に該当する銘柄を指します。
出典:JPX website
トヨタ自動車(7203)は2021年9月末で1:5の分割を実施済みです。
任天堂(7974)は2022年9月末で1:10の分割を実施しました。
ファーストリテイリング(9983)は2023年2月末で1:3の株式分割を実施します。
オリエンタルランド(4661)は2023年3月末で1:5の株式分割を実施します。
株式分割と期待される効果
「株式分割」とはその名の通り、1株をいくつかに分割し発行済みの株式数を増やすことです。
企業から「1株を2株に分けます」という発表があった場合、元々その株を100株持っていた人は200株を保有することになります。この時、株価が1株あたり2,000円であれば、株式分割後は1株あたり1,000円になります。
保有する株数が2倍になって1株あたりの価値が2分の1になっているので、保有している株の価値は実質20万円のまま変わりません。
株式分割実施で期待される効果の一つが、株式の流動性の向上です。
株式分割が行われると株式の最低購入価格が下がるので、これまで購入することはできなかった投資家なども株式を購入できるようになります。
例えば、1株あたり2万円の株価がついている株式を100株単位で購入するためには、最低でも200万円が必要になります。
ですが、1:5の株式分割が行われれば、理論上株価は4千円になるため100株単位でも40万円で購入することができます。
また、すでに保有していて売りたい人は「半分だけ売る」ということもできるようになり、買いたい人と売りたい人のお互いの選択肢が増えます。
株式分割によって、売買が活発に行われるようになる可能性があるのです。
東証は一投資単位あたり50万円以下を推奨している
東京証券取引所(以下:東証)は、個人投資家が投資しやすい環境を整備するために、望ましい投資単位として5万円以上50万円未満という水準示しています。
上場内国株券の発行者に対して、50万円以上で株式が売買されている場合には、事業年度経過後3か月以内に、5万円以上50万円未満の水準へ移行するための、当該発行者の投資単位の引下げに関する考え方及び方針等を開示するよう義務付けています。
出典:オリエンタルランド IRサイト
さらに、2022年10月には投資単位が50万円以上の会社に対して、投資単位の引下げに係る検討について要請をしています。
100株単位という制度が悪いとも思いますが、東証なりに個人投資家の投資環境を改善しようという努力をしているということでしょう。
ちなみに同じ日に、東証は投資単位が100万円以上の企業リストを公開しています。
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/company-split/nlsgeu000005vh6t-att/nlsgeu000006pb0m.pdf
オリエンタルランドとファーストリテイリングが株式分割を発表したのは、このリスト公開後でした。
今年、株式分割が多くなる?
表題のように筆者が考えているのは、東証の働きかけにこたえつつある企業が出てきていることだけではありません。
2024年に開始するいわゆる新しいNISA(名称が決まっていないのでこのように呼ばせていただきます)制度が株式分割を促すと考えているのです。
出典:金融庁website
恒久化される新しいNISA制度には「成長投資枠」が設けられます。
現時点ではっきり決まっていませんが、「成長投資枠」では、普通株も購入できるといわれています。
「成長投資枠」の年間投資枠の上限は240万円です。言い換えると一投資単位でこの上限を超えるような銘柄は「成長投資枠」では買えません。
この新たなルールが企業側の株式分割へのインセンティブをより促すと筆者は考えています。特に扱う製品やサービスがコンシューマー向けであれば、より個人投資家を意識するようになるかもな、と考えています。
一方、1:3の分割をしても一投資単位で240万円を超えそうなファーストリテイリングは、新しいNISAの成長投資枠で買ってくださらなくてもいいと考えているのかもしれません。
まとめ
2021年から大型株の株式分割が少しずつ増えてきた
株式分割で期待されるのは、株式の流動性の向上
新しいNISA施行前に、大型の値嵩株の株式分割が増えるかも